2025年7月5日、新宿HILL VALLEY STUDIOにて、musbimeの自主企画ライブ「Tag of War-つなひき-」が開催された。
この企画は、メンバー自身がブッキングや会場準備に奔走し、観客との距離感が近いDIYのスタジオライブという形で実現した。
彼らの呼びかけに応え、共演する3バンドのファンも集い、会場は期待と熱気に満ちていた。
運動会のようなコンセプトに沿って、各バンドにはフライヤーに記載された色のはちまきが2本ずつ(musbimeはメンバーの人数分)配られ、それぞれ身につけていた。
共演したのは、静と動を自在に操るA To Fade In、推進力ある熱演で心を揺さぶった罅、そして轟音の中に繊細さを宿すKILDREN。それぞれが強い個性を響かせ、musbimeへとバトンを繋いだ。
そしていよいよ、トリを務めるmusbimeがステージに現れる。
シングルのカバーでもおなじみのくまのぬいぐるみがマイクに添えられ、メンバーの「つなひき」の物語が始まった。
出演: A To Fade In / 罅 / KILDREN / musbime
A To Fade In
トップバッターを務めたA To Fade Inは本気で音で遊んでいるようにライブをする。
阿吽の呼吸で奏でる音にクオリティの高さを感じる。
罅
2組目は4人組オルタナティブロックバンド罅。
MCから伝わる、バンドとしての推進力も観客を魅了した。
KILDREN
5人組轟音シューゲイズバンドであるKILDREN。
それぞれの奏でる音に迫力と繊細さが宿る。
musbime
【セットリスト】
- 流星群のあと
- 水滴をみる
- 一縷
- はるかすみ
- 新曲(タイトル未定)
- ほつれたまま
- メイストーム
澄み渡る歌声と残響が溶け合う夜
こいでの掛け声で始まった1曲目「流星群のあと」。
イントロのツインリードギターのフレーズに観客の視線が集まり、けんもくの澄んだ歌声が高低差を描いて心に入ってくる。残響が心地よく響き、会場は一瞬でmusbimeの世界に引き込まれた。
続く「水滴をみる」では、変則的なドラムとギターリフの絡みが印象的。
けんもくが語りかけるように歌い、静けさが訪れる瞬間、空気が張り詰めた。
曲の終わりにはまもるのベースが浮かび上がり、楽曲に深みを添える。
3曲目「一縷」は、こいでのアルペジオから始まり、サビで一気に楽曲がうねりを生む構成。
「はるかすみ」では、けんもくの澄んだ歌声とこいでのポエトリーリーディングの対比が映え、たいせいのギターのチョーキングも冴え渡る。観客の多くがリズムを刻みながら、彼らの音に身を委ねていた。
「来春EPリリース」と「新曲」の発表
ライブ中盤のMCで、こいでから重大な発表があった。
「musbimeも今日の企画ライブを一区切りにします。そして、来年の春に僕たちのEPをリリースします。今日は新曲も持ってきたので、ぜひ聴いてください。」
節目となるこの夜に、来春への決意表明が重ねられる。その言葉に、観客の期待と熱気がさらに高まった。
新曲が魅せる新たなmusbime
発表された新曲はアップテンポで、こいでのポエトリーリーディングが印象的な挑戦的なナンバー。
間奏の激しいギターが炸裂し、これまでの彼らの轍に新しい色を重ねた。
続く「ほつれたまま」では、ばちおの独特なドラミングが冴えわたり、リズムに取り憑かれたような彼の姿に、観客も思わず目を奪われる。
そしてラストは、代表曲「メイストーム」。
バンド全員がひとつの音の壁を紡ぎ出し、観客を巻き込みながらクライマックスへと向かう。たいせいのソロギターで一度静まり、そこから一気にパワーを解放。
音楽に身を委ね、全身でぶつかるように演奏するメンバーの姿に、会場全体が一体感を持って揺れた。
最後、たいせいのギターストラップが外れてもなお、弾き続ける姿がこの夜の彼らを象徴していた。
音楽と観客、そしてmusbime自身が「つなひき」をしていたような特別な夜だった。
次の一歩へ
DIYの精神で走り抜けたこの自主企画を経て、musbimeは来春のEPリリースに向けて新しいステージへと進もうとしている。
この日、彼らが見せた「残響」は、きっと春まで消えずに私たちの心に残り続けるだろう。