羊文学さんの「honestly」をご紹介します。
力強く、心の奥に染み込む歌声、単調だけど正確で胸に響くドラムのリズム。
すべてが彼女たちの唯一無二の世界観を作り上げています。
歌詞には、今までの自分の世界の捉え方が変わった瞬間から、この世界でどう対峙したら良いのか模索する心模様が伺えます。
受け止め方や感情に蓋をしないで、本来の自分でこの世を見渡してみると、なぜか痛みを伴う。
そんな経験、もしかするとリスナーの方の中にもいるのではないでしょうか。
何かと真っ向から向き合うことは、エネルギーも必要だし痛みも感じるのです。
ここからは歌詞の考察をしていきます。
歌詞に迫る
ねぇ、私のこの声は
君のためにあるんじゃないわ
感傷的で上手い言葉も
今の私にはないわ
いつもは、今までは、余裕のある私でいられた時には君のために感傷的で上手い言葉が使えたのに。
今はそんな余裕がありません。
自分の心のままに、忖度しないでそのままの心で振る舞うしかないの。
そんなふうに普段の自分(今までの自分)とは変わったことを伝えています。
And honestly
今目の前で流れてるニュースで誰かが傷ついたって
どうだっていいと思ってるの
なのにどうして?
いつもどこかが痛くて仕方ないの
痛くて仕方ないの
”And honestly”とは、「そして正直に」という訳です。
今まで世界で起こる対岸の火事には気持ちが揺るがなかったのに、今はなぜか心が痛むのです。
今まで感じなかった痛みを急に感じる自分に戸惑っています。
でもそれは、自分の心に正直になった証拠なのかもしれません。
見ないように、感じないように、蓋をしていたからわからなかっただけで、
実はずっと知らぬところで心は感じていたのでしょう。
ただここにいさせて
(何も求めないで)
意味など脱ぎ捨て
(何も求めないで)
透明に変わって
この部屋で一人でいたいの(何も求めないで)
突然に生身の体と心が表に出てきて、服や鎧を脱いでしまったように、不安や痛みを感じる自分。
今の自分に何かを求められたり、何かを聞かれても、上手に対処なんてできないのです。
ただ、この部屋に一人でいたいだけ。
今までの自分がいなくなったように、透明の存在になってしまいたいという願望。
自分の変化や、何かに気づいてしまった時、感情が制御できない時、なぜか透明になりたいと考えてしまうものです。
ねえ、私のこの歌が
世界にとって無価値だろうと
築いたものを壊してしまおうと
気にしても仕方のないことよ
自分の存在や作り上げてきたもの、その全ては生きてきた証でもあります。
そして自分の全てでもあります。
それが無価値で、何もなかったかのようになってもしょうがない。
無の境地のような、悟ったような心境なのでしょう。
今までの自分とは違う自分(本当の自分)に出会ったともいえますね。
But honestly(but honestly)
わけもなく(わけもなく)
溢れ出した涙が私の足を止めて
戻れないと(戻れないと)
わかってるの(わかってるの)
なのにどうして?
やまない声が私を苦しめるの
(私を苦しめるの)
自分の心に正直になった時、人は痛みを伴うのかもしれません。
それは、今まで見なかったことや向き合わなかったことに対峙し、そこから逃げ出そうとしてしまう自分の弱さを感じるからではないでしょうか。
”戻れない”とは、おそらく今までの自分に。
”やまない声”は一体何を伝えているのでしょうか。
私を苦しめるの
(私を苦しめるの)
痛くて仕方ないの
痛みを感じることは生きているから。
子どもの頃はいたいけで、まっさらな心が何度も傷つきました。
でも大人になるにつれて、色々な経験をして武装していくようになります。
なるべくスマートに、なるべく傷つかないように。
もしかすると、幼い頃のピュアな心に戻ったのかもしれません。
最後に
いかがでしたでしょうか。
シンプルですが、とても重たいテーマだと思います。
世渡り上手や、タイパを気にして物事の本質に目を向けない風潮も現代にはある中、
ありのままの自分の心で向き合うことを歌っていました。
見たくないもの、感じたくないこと、様々あると思いますが、真摯に向き合うことには痛みが伴うのです。
あなたはこの曲を聴いて何を感じましたか?