清々しいギターのストロークから始まり、春の新しい何か始まる予感を感じさせます。
萠珈さんの柔らかく包み込むような歌声が春風にのってやってくるようです。
春模様を美しい日本語で綴り、すぐに通りすぎてしまう季節を捉えている「春霞」。
いつでも春に戻ってくることができるSpringSongです。
歌詞に迫る
眠れもしないくせに
愛の囁きに応えず
果てなき思考巡らし
宛てなき行く末を問う
ゆら、ゆら、淀む
春は春眠暁を覚えずというほど眠くなる季節ではありますが、そんな春でも眠れない日は訪れます。
”愛の囁き”とは、自分に対する好意を感じてはいるけれど、それには応えないということでしょうか。
それよりも、自分の思考がどんどん飛び立って膨らんでいき、着地しないでゆらいでいる様子です。
夕陽の中で目覚め
鈍る身体で繰り出す
生暖かい街の
懐かしき色と温度
夕陽の中で目覚めるということは、うたた寝をしてしまい、夕方に目が覚めたということですね。
夕方に目が覚めると、どことなく寂しさを覚えます。
寂しさを紛らわすためなのか、街へ繰り出します。
懐かしい色や温度は、自分の慣れ親しんだ街であることが伺えますね。
この身体を避け吹き抜ける風を見送る
この川原の先、形を変え空へ逃げていった
自分を追い越していく風に、自分を形どったような感覚にとらわれます。
その風はまた形を変え、最終的に空へ逃げていきます。
うららかな春霞に
青い記憶を馳せて
寄せても還らぬ在りし日
香り立つ並木と修羅
かつて頬を掠めて色めいた花
惑うたそがれ
”青い記憶”とは、過去の古い記憶を指すのかもしれません。
記憶の中の過去には戻ることができないですが、自分の中に鮮明に情景が浮かび上がります。
”並木と修羅”の中に、様々な出来事があったように見受けられます。
進めど変わらぬ景色
愛されど解けぬ孤独
踵返し宵闇 遠く賑わう宴
真逆の言葉が並びますが、言葉遊びがうまく使われています。
日々は繰り返しているのに、変わらない日常だったり、
愛されてはいるけれど、自分自身が満たされず孤独を感じたり・・。
生きていると何度も味わう感情かもしれません。
”賑わう宴”は何を指しているのでしょうか。
いつか同じように
今を思い返し詠う
散らばった春の暦
辿るのろし求めて
仰ぐ刃こぼれ朧月
薄桃の水面揺れる
流れに任せ浮かぶ
街の灯りを溶かして
今を積み上げた先に未来がありますが、恐らく今日のように過去を振り返っては
気持ちを言葉にして詠うのでしょう。
春のうららかな陽気と景色、街の穏やかな雰囲気や花の香り。
すべてが記憶と感情と一緒に結びついて心に残ります。
暮れなずむ春霞に
淡い期待を馳せて
還るまほろば夢の中
香り立つ並木と修羅
まぶたの裏でそよぎ色めいたまま眠るはくめい
淡い期待を馳せるのは、思いもよらない出来事や新しい発見があるかもしれないと
若干の期待を寄せているからでしょうか。
どこかまどろみの夢と現実の間の中で、眠っているように、夢を見るように過ごす春の1日。
ゆらりゆらり、のんびりと漂う風になったような気分になりますね。
最後に
夢の中のようにぼんやりと春の景色や過去の思い出が巡る中、心地よい眠りに誘われそうなこの楽曲。
日本の四季を意識し、情景や景色が目に浮かぶのは言葉のチョイスが良いからですね。
ギターのストロークとともに何度もリピートしたくなるこの曲は、ぜひお天気の良い春日和にぴったりです。
春は毎年巡りますが、同じ春はありません。
毎年違う春を積み重ねて、人生の中で春の記憶ができていくのかもしれないですね。